ハート・ロッカー

原題　THE HURT LOCKER

　監督：キャスリン・ビグロー
　脚本：マーク・ボール
　製作：キャスリン・ビグロー
　　　　マーク・ボール
　　　　ニコラス・シャルティエ
　　　　グレッグ・シャピロ
　製作総指揮：トニー・マーク
　撮影：バリー・アクロイド
　編集：ボブ・ムラウスキー
　　　　クリス・イニス
　音楽：マルコ・ベルトラミ
　　　　バック・サンダース
　主演：ジェレミー・レナー
　　　　アンソニー・マッキー
　　　　ブライアン・ジェラティ

　ストーリー
　イラク駐留米軍のブラボー中隊はバグダッド市街で爆弾処理の真っ最中だった。マット・トンプソン（ガイ・ピアース）軍曹はＪ．Ｔ．サンボーン軍曹（アンソニー・マッキー）軍曹とオーウェン・エルドリッジ（ブライアン・ジェラティ）技術兵と共にいつものように任務をこなしていた。しかし遠隔操作していた爆薬を積んだ荷車が外れ、仕方なくトンプソン軍曹が防護服を着用し爆弾処理に向かうが爆弾は爆発してトンプソンは死んでしまう。
　それから新たにウィリアム・ジェームズ（ジェレミー・レナー）二等軍曹が加わり、爆弾処理に向かうが彼のやり方に不安を感じるサンボーンとオーウェンだった。

　皆さんもまだ記憶に新しいと思います。そう。アカデミー賞でジェームズ・キャメロンと元夫婦対決で話題となった作品です。結果はこの『ハート・ロッカー』が勝ったが。
　さてさて。アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、音響編集賞、録音賞と６部門も受賞しました。しかし僕はそれほど期待していませんでした。監督のキャスリン・ビグローは前に『ハートブルー』を作っていたからです。なので、どうせＢＬ風の男映画なんだろうなって思いました。でもこれは面白かった。正直甘くみていた自分が恥ずかしい。
　９１１テロという衝撃的な出来事がきっかけとなったイラク戦争。この作品の魅力はただ人を撃ち殺すという従来の戦争映画ではなく、爆弾処理にスポットを当ててイラク戦争の悲惨な現実を描いている。僕はそこに惹かれましたね。しかも演出が良かった。音楽もない中、炎天下で汗を流しながら爆弾を解体するシーンは緊張感があって見ている人を引き込む。まるでジェレミー・レナーが演じるウィリアム・ジェームズの解体に立ち会っているかのようだ。特に最初の方にある住宅街での処理と国連の施設の処理はアドレナリン全開です。他の映画にも爆弾解体するシーンがあるが、それとは比べものにならないくらい緊迫感がある。それと、驚く事にこの映画は他にも珍しい演出があるのですよ。それは狙撃戦があるのです。イラク人が使っているのはＡＫシリーズの狙撃銃、ドラグノフ（？）を使う中ア
メリカ軍は最強のライフル、バレットを使って応戦。このシーンも良い。まず何がいいかと言うと、狙撃戦は普通の銃撃戦とは違って無駄弾は使わず１発で仕留めるのです。なので少しでも隙を見せれば確実に死ぬ、そんな極限状態になるのです。時には相手が痺れを切らして動くまで、何時間もその場にいるのです。それがこのシーンでは見事な演出であります。こちら爆弾解体に負けないぐらいの緊張感のあるシーンです。
　さてさて。色々と褒めましたが、ただ僕は物語としては弱いと感じました。正直ドキュメンタリーに近いです。主人公たちが何かに立ち向かうのであれば物語が進むのですが、これは結構淡々と爆弾を処理したり銃を撃ったりするだけなので弱いです。正直、なんで脚本賞を取ったのか理解出来ないです。まあ、最近のあそこは謎ですがね。そんな訳で、作品としてはかなり良いですが脚本は弱いです。
　てかこの映画を見てびっくりしたのが、『Ｌ．Ａ．コンフィデンシャル』でムカつくエド・エクスリー役をやったガイ・ピアースが最初に派手な爆発で死ぬトンプソン役。『交渉人』や『１６ブロック』に出ているデヴィッド・モースがウィリアム・ジェームズに爆弾をいくつ解体したかと聞くリース大佐役で出ているとは思わなかった(^-^;
　あっ、そういえばウィリアム・ジェームズ役のジェレミー・レナーも、『Ｓ．Ｗ．Ａ．Ｔ．』（悪役）や『２８週後…』（ウィンクして死んだカッコイイ米軍役）の人なんですよね。
　最後に、主人公であるウィリアム・ジェームズが再び戦場に戻った事に疑問を感じている人もいると思うので、僕なり解説を。映画の冒頭でもあったテロップを読みましたか？　あれに答えは書いてあります。

　“戦争は麻薬である”

　これで分かっていただけただろうか？　つまりウィリアム・ジェームズは戦争中毒なのだ。ラストはそういうゾッとする場面なのだ。

　オススメ度

　★★★★☆